一枚の絵から 日本編

パクさんこと高畑勲監督がスタジオジブリの月刊誌『熱風』で連載した「一枚の絵から」（2003年1月〜2008年6月）のうち日本の作品を取り出して単行本化したものです。俵屋宗達「伊勢物語図」より「芥川」（75-81頁）ではおんぶの文化の重要性を説き、歌川広重「名所江戸百景」より「四ツ谷内藤新宿」（157-165頁）では馬のお尻越しに夕暮れの江戸の町を臨み、小早川秋聲「国之楯」（182-192頁）は正真正銘の死を描いたと評し嘘を描いた藤田嗣治の作品を「反戦」とする最近の論評に反対しています。「独断と偏見」による「ただの報告文」（まえがき）と断っていますが、視線はその作品を通り越して日本の失われていく伝統・自然への愛惜へと行き着き、漫画映画監督パクさんのまなざしの重さが感じられます。